ご案内お知らせ短編連載「マスカレイド」書評動画
自作小説(短編中心)と書評(というか感想文)。 ジャンルはミステリィが主体です。
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2007.01.09 Tue
おめでとうございます。
今年もいろいろよろしくお願いします。

冬休み中はネットワーク環境にありませんでしたが、今日から更新再開。
折角新年ですし、それじゃあ一丁気合いを入れて。
――でも更新速度が速くなったりはしないと思いますが……。
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2007.01.10 Wed
もう10巻ですね。そろそろラノベに興味がない人はこの書評を読まなくなっているでしょう。
読書記録、というつもりで書いていますので、どうぞ遠慮なく読み跳ばしてやってください。

悪魔のミカタである堂島コウを取り巻くみークルの仲間たちの関係は、少しずつ、変わってきた。より複雑に、より緊密に。交錯する想いの中、イハナは悪魔と「知恵の実」について、何かを、おそらく全てを知る存在、吸血鬼「ザ・ワン」を呼び寄せる決断をする。そしてそれは、これから始まる悪夢の幕開けとなるのだった。

それぞれの登場人物の、それぞれの風景。オムニバス形式、といっていいんでしょうか。
今までのキャラクタの背景とストーリィの伏線を掘り下げる、いわば幕間。
この本単体では、ちょっと評価できないかなあ。別にすごく良い話があったわけでもないし。
あ、でも真嶋がかっこよくなってたのは個人的に大絶賛。
2007.01.11 Thu
 私を門の前で降ろすと、金山はそのままUターンして街の方へと戻っていった。晩餐会には参加なさらないんですか、と問うと、参加させて頂きますが、その前に買い出しに行かねばなりませんので、という答え。顧問弁護士にして専属運転手は、どうやらおつかいまで引き受けているらしい。
 椿なのか山茶花なのか、腫れぼったい葉の茂る背の高い垣根には、ところどころ真っ赤な花が咲いている。もう少し寒くなればつぼみは皆開いて、田舎の冬景色を彩るだろう。
 屋根のある木造の扉。いかにも格式ある旧家の門構えだ。
 ――思ったより風が強い。日も沈んで、空気が冷たくなってきた。コートを着てくれば良かったか。
 表札とブザーを確認する。
 真山の名を見て。――とうとう来たのだ、と天を仰ぐ。
 準備はできているか? ここは敵地だ、気を抜いてはならない。
 私は長く息を吐く。
 そしてゆっくり、ブザーのボタンを押した。指は震えなかった。
 三十秒程、そのまま待った。
 ざく、ざく、という音が段々近づいてきて、扉の向こうで立ち止まった。金属の触れ合う音がして、錠が外されて、ぎいと扉が内側に開く。その瞬間、風が凪いだ。
 唾を呑んで、目線を前に。
 白髪の女性が立っている。着物姿だった。
 曲がった腰をさらに曲げて、私に向かって頭を下げる。
「お初にお目にかかります。真山緑と申します」
 静かで、しかし力強い声だった。私も深く礼を返す。
「初めまして。風間昌吾です。本日はお招きいただいて有り難うございます」
 予め用意しておいた挨拶の応酬。
 顔を上げて、サングラス越しに目を合わせる。
 守るもののある、女の目。
 お互いに、笑顔は作らなかった。
「さあ、どうぞ中へ。ご案内いたします」
 緑は私の左斜め前を、左手の杖で身を支えながら、行く。
 ざく、ざくと砂利を踏みしめて。
 着物は黒、帯は紫。夕闇の中、白髪が映える。
 ――私の、義理の母、か。
 腰は曲がり、杖をつきながら、それでも足取りは確かだ。
 私は真山邸全体を見渡す。
 正面には、やや古めかしい木造の母屋。二階建てのようだ。六十坪弱といったところだろうか。その屋敷を背後から取り囲むように、竹林。北風に吹かれてかさかさと音を立てている。
 右手には小さな池を中心に石が組まれ、松が何本か植えられた日本庭園。
 左手には横に長い倉のような建物。
「あの……あちらは」
 その建物を指差して緑に声をかけると、緑は振り向きもせずに言った。
「あれは能舞台です。主人が時々練習に使っています」
「能舞台……、ですか。さすが旧家ですね」
 私は驚いたような声で言った。緑はそれを軽く笑う。
「いえ、あれは主人が建てたものですよ。つい最近」
「建てた? はあ、それはそれは……」
「呆れますでしょう。他にもお金の使い道はいくらでもあるでしょうに……」
 愚痴るように、緑はそう言った。
 ――お金の使い道。
 遺産の話を持ち出すつもりだろうか。私は警戒するが、前を歩いている緑の後ろ姿に振り返る様子はない。歩調を変えず、姿勢を崩さず。――何を考えている、真山緑。表情が見たかった。横に並んで歩くべきだったか。
 ここで緑と一対一で遺産相続の交渉をするのは、まだ早いだろう。私は先手を取って能舞台の話を続ける。
「練習、ということは、勝春さんが演じられるんですか、あそこで」
「ええ、古典芸能の愛好会に入ってまして。そこのメンバの方々も、月に一回ぐらいは遊びにいらして一曲演じてくださいます」
「へえ。いいですね。是非一度見せていただきたいものです」
 社交辞令。
 だが、緑は――ここで初めて、
 歩みを止めて、こちらを向いた。
 微笑んで。
「他人様にお見せする程の腕前じゃあありませんよ。所詮は老人の道楽です」
 私も立ち止まる。そして、私はサングラスを外した。
「何をおっしゃいます、私は身内ですよ……、お義母様」
 再び正面から、相手の目を見据える。
 守るもののある、女の目。
 強い、女の。
 ここまで生きてきた、女の。
 女の……目。
 さあ、どう出る。
 お互いに一歩も引かず、
 お互いに一言も漏らさず、
 ――そのまま数瞬が経った。
「なるほど、確かに貴方は身内のようね」
 先に目を逸らしたのは、緑だった。
 彼女は再び私の左斜め前を、杖をつきながら歩き出す。
 ざく、ざく、と。
 何事もなかったように、今まで通りの歩調、姿勢で。
 私は緊張が抜けず、すぐにその場から動くことができない。
 声だけで、彼女を追う。
「どういう意味です?」
 彼女は、立ち止まらず。
「――貴方の目、あの人にそっくりよ」
 何の感情も込めずに、そう言い放った。
 ざく、ざく、ざくり。
 そして母屋の玄関扉を開けて、彼女はこちらに向き直った。
「さあどうぞ、お上がりください」
 一際強く吹き付けた冬の風が、私の体をぶるりと震わせる。
 私は首を小さく振って、黙って歩き始めた。
2007.01.12 Fri
11巻「ザ・ワン」、12巻「ストラグル」、13巻「MLN」で三部作構成。(だと思う。)

和歌丘から侵攻を始めた吸血鬼「ザ・ワン」。対峙するのは女子高生水彩、舞原家の姫君サクラ、サクラの友人である美里、エレナ、唯。牧師ブックマン、謎の男海藤、そして小学生昇。圧倒的な数と力を誇る吸血鬼を相手に、彼らは奇跡を起こせるか。

ここに来て、物語の流れが一転しました。
スケールが違う。これまではあくまで個人対個人の対決を書いてきたのが、今回は人類対吸血鬼の生存競争にまで拡張します。登場人物も一気に増えました(何人がレギュラに残れるかは疑問ですが、13巻表紙の彼女はこれからも出てきてくれるでしょう)。代わりに主人公堂島コウは、殆ど出番なし。まあ、いいところを拾ってはいくんですが。
これだけいつもと全然違う話にしておきながら、このシリーズの基本的なスタイル、「特殊条件下での知恵比べ」は崩していないところは、作者のバランス感覚でしょう。

テーマが交錯しすぎてインパクトが弱かったのは、難点。
登場人物一人一人が背負っているものがそれぞれみんな重いから、逆にその描写が軽々しく見えてしまう。勿体ない、と思います。どのキャラもいい味出してるのに。
多数の登場人物が勝手に考えて行動して、その因果が収束して一つの奇跡を起こす、というのは恩田陸も「ドミノ」でやっていましたが、どのキャラにどれだけの重さや強さをもたせるか、その辺りのさじ加減はやっぱり恩田の方が断然上手い。経験の差でしょうか。

恩田と言えば、実は彼女の「月の裏側」と今作は非常に似ています。
共通点は、「ある町で、人間もどきに人間たちが取って代わられていくが、人間もどきになれば、みんな一つに繋がれる」という内容が、話の核になっていることです。
だからといって、パクリだとか言うつもりはありません。単に、このジャンル(人間もどきもの?)の典型的なストーリィに両者が則ったというだけでしょう。
指摘しておきたいのは、二人のこのテーマに対する姿勢です。
「月の裏側」では人間もどきは終始不気味なものとして描かれていきます。人間たちはおろおろするだけで結局何もできず、静かに滅びのときを迎えます。(ラストは意表をつくものでしたが、ここでは触れません。)
対して本作では、吸血鬼は不気味であると同時に残酷さも備えた存在です。人間は弱いけれど、その多様性で大逆転を起こしていきます。
この違い。
これはおそらく、恩田が物語をありのままに、筆の走るままに書く作家であるのに対し、うえおが物語にメッセージ性を込めることに重点を置く作家であるということなのだと思います。だから恩田は雰囲気で読ませ、うえおはキャラクタの成長で読ませる訳です。
うえおはそういった意味では、まさしく正統派のライトノベル作家と言えるでしょう。
――以上、もっともらしい解説でした。

それはともかく、サクラ怖いよ。ヒロインこんなでいいのかな。

一学期編完ということで、一区切り。二月には新刊が出るらしい。楽しみです。
2007.01.16 Tue
来週ゼミの教授の前で論文紹介をしなくちゃいけなくて、そのレジュメ作りに追われています。
ので、「マスカレイド」の連載は、今週と来週はお休み、ということでお願いします。
(多分、書評/感想文は何とか続けると思います。)

――いや、決して煮詰まって嫌気がさしたから書かないわけじゃないんですよ? ええまさかそんなことは。
2007.01.22 Mon
お知らせします。
携帯電話からこのブログを見にくると、カテゴリィは表示されないわ最新の記事は表示されないわで、新しく更新された記事にたどり着くまでにすごく時間がかかっていた、と思います。
そこで、携帯電話からでもPCと同じようなページが表示されるようにしました。これならトップページからすぐに見たいページに行ってもらえるはずです。ちゃんと機能していると思いますが、何か不都合があったら教えてください。
2007.01.22 Mon
久しぶりにミステリィ。しかも本格。

F大学のオカルト愛好会のメンバ六人が、OBの所有する山荘へ合宿に訪れる。その山荘は十年前一人の天才作曲家が七人の男女を惨殺したいわくつきの物件である。かつての惨劇の部屋で一晩を過ごした彼らが朝目覚めると、空は嵐となり、主人は死体となっていた。疑心暗鬼の中浮かび上がる女の影、そして連続殺人鬼「ジョージ」の正体。螢の旋律が誘う狂気の行く果ては……。

トリック自体は面白いです。
大胆にして緻密、という帯通りの出来。読み直したら伏線がかなり細かく張ってあることに驚かされました。
でも、とてもじゃないけれどこのトリック、鮮やかに決まっているとは言えません。
プロットが煩雑なせいでしょう。こっちは探偵の推理と事件の現状についていくのがやっと(ひょっとして、私が馬鹿なだけなのか)。ミステリィに不慣れな人には敬遠されるかも知れません。昔から麻耶ってそうですけど……。

この人の文体がどこかいつも素人臭いのは何ででしょう。語彙といい、表現といい。
人物造形もちょっとおかしい。島原なんて前半と後半で全然キャラが違う。ステレオタイプな登場人物も多かった。

「螢のメロディ」のアイデアは秀逸です。非常識ではあるけれど、こういうの嫌いじゃない。

さて、以下ネタバレですので注。(麻耶雄嵩の他の作品に関するネタバレも含みます)
2007.01.28 Sun
上下巻分冊。短編連作形式。

春休みに時代錯誤にも吸血鬼に襲われてしまった主人公阿良々木(高校三年男子)は、それから度々怪異に出会うようになる……というか、怪異に困っている女の子たちに出会うようになる。青春エンタの最前線西尾維新の放つ、現代の怪異譚……に見せかけたラブコメ風ギャグ小説。

怪異とかシリアスなストーリィとか主人公の成長とか、もちろん西尾だからちゃんとオーソドックスなところは押さえてるんですけど……、押さえているだけで、重きは置かれていません。作者本人も主人公も認めているように、メインは漫才。
笑った笑った。特にひたぎ。彼女の台詞があるページでは笑わなかったページの方がずっと少なかったくらい。
登場人物たちの会話だけで読者を爆笑させられる、というのはすごい才能だと思います。さすがは森博嗣の後継者。そのギャグのセンスを私にも分けて欲しい。
面白ければ全てよし。言葉巧みに抱腹絶倒、西尾らしく楽しい小説でした。
2007.01.30 Tue
北国の街に降り立った神原恵弥。彼の目的は双子の妹なのか,それとも死んだ博士の残した謎なのか。クレオパトラの夢を巡って,幾つもの思惑が交錯し、幾つものイメージを浮かび上がらせる。恵弥は果たしてハッピィエンドで新年を迎えることが出来るのか。

恩田にしては珍しく,爽やかな読後感を残す小説でした。彼女の物語は大抵きちっとしたオチがつかずに終わることが多いんですけど,今回は見事な着地。
この小説の核となっているのは、物語の印象がぱたんぱたんと二転三転するような構造。ミステリィ好きにはとても楽しめる仕掛けでした。伏線の張りかたも無駄なく隙なく簡単明瞭。ううん、見習いたいものです。

主人公である恵弥は、マージナルなジェンダの持ち主(恩田の十八番)。男でありながら女言葉を話し,しかもバイセクシュアル。彼の一人称で,最初から最後まで物語は進行していきます。
恵弥はめちゃくちゃ記憶力が良くて,直感も論理もキレまくり、しかも饒舌な男なのですが,女言葉のせいで嫌味に感じない。こういうキャラ作りの上手さもまた、恩田ならでは。これがパーフェクトなキャラでは、魅力的な主人公にはなれなかったでしょう。

気になったのは、軍手のこと。結局あれは何だったんだ。
誰か読んだ人、わかったら教えてくださいな。
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