ご案内お知らせ短編連載「マスカレイド」書評動画
自作小説(短編中心)と書評(というか感想文)。 ジャンルはミステリィが主体です。
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2006.12.20 Wed
八巻「ドッグデイズの過ごしかた」と九巻「ドッグデイズの終わりかた」で分冊。

夏の暑い日、学校の先輩の駆け落ちに、成り行きで付き合うことになった堂島兄妹。彼らを追うのは極道の女。そこに乱入してくる元<代行者>。カーチェイスに銃撃戦、抜けたその先にあるのは、強者だけが笑う世界なのか、それとも……。

果たして自分は、願いを叶えるだけの覚悟があるのだろうか。
中途半端が、一番いけない。
などと珍しくヘタレている堂島コウがどう立ち直っていくか、を主軸にして、ハードボイルドな展開でストーリィは進行していきます。スピーディ。

悩んで迷ってもどうにも結論が出ない、前にも後ろにも進めなくなったとき。
そのときこの本は、きっと答えを教えてくれます。
――所詮ラノベだけど(コラ)。

さて、今回はちょっと内容に触れたいので、以下ネタバレにします。構わない方だけ、「続きを読む」で。

わざわざネタバレにしてまで言及したかったのは、この作品の手法です。
ひょっとしたら作者は意識せずにやったのかも知れない、けど。
それは、デウス・エクス・マキナ同士の対決、です。
デウス・エクス・マキナというのは、(マスカレイドでもちょっと触れましたが)唐突に現れてあちこち全部丸く収めてしまう、ギリシャ悲劇以来の手法。人であったりものであったりしますが、いきなりご都合主義展開でハッピィエンドに持ち込むための仕掛けです。
今回、デウス・エクス・マキナの役としてまず登場するのはイハナ。彼女は突然現れて、騒動の大前提、「縁談を成立させなければ縹組は滅ぶ」を鶴の一声で覆してしまう。はいこれで大団円、みんな歓声を挙げるが……、それでオチにするような作者だったら、今頃この本は書店に並んでいないでしょう。
神のごとき権威をもつデウス・エクス・マキナの前では、人間は無力を感じてしまう。じゃあここまで自分がやってきたことは何だったのだと。縹撫子もそうで、喜ぶ仲間たちの中で孤独を感じて死を選ぼうとする。
ここで二人目のデウス・エクス・マキナがやってきます。ランドール・コーンウォーク。彼は殆ど初対面の撫子を抱きしめて愛を告白する。一人目の神に救済されなかった彼女は、彼の愛の中で幸せを見出して、こんどこそハッピィエンド、誰もが満足するラストシーンを迎えます。
つまりここで、イハナとランドール、どちらのデウス・エクス・マキナが撫子に救いの道を与えることができるか、というテーマが浮き上がってくる。イハナは権力で、ランドールは愛で不可能を可能にする。さあどっちが本当に人を救うのか。
まあどちらがより正しいのかなんて答えがあるものでもないし、私の意見を言ってもしょうもないのでやめましょう。注目すべきはあくまでその手法そのものです。これ、実はミステリィから派生したような気がしませんか。
もともとミステリィはデウス・エクス・マキナを前提に生まれてきたようなジャンルです。探偵は事件の背景にある悲劇とは関わりのないところからやってくる(勿論例外はありますよ)。そして探偵が推理を述べて、犯人が泣きながら自供したり悔しがりながら逮捕されたり諦めて自殺したりして、事件は収束する。
探偵は一人だとは限りません。何人かでチームを組んで捜査することもあります(例えば刑事物ならほぼこのパターンだし、少年探偵団なんかも有名です)。それ以外に、二人ないしそれ以上の探偵が、それぞれ自分の推理を提出してどちらが真実に近いか競う、といういわゆる推理合戦というのがあります。これがまさに先程のデウス・エクス・マキナ同士の対決というのに該当します。
もう少し根拠を挙げてみましょう。うえお久光は元々ファンタジックミステリィの旗手として登場してきた書き手です。デビュー作「悪魔のミカタ 魔法カメラ」は変格ではあるものの確かにミステリィでした。さらに「悪魔のミカタ ストレイキャット・リターン」では主人公の推理をヒロインがひっくり返すというシーンを見つけることができます。
要するに何が言いたいかというと、ミステリィにはまだまだ応用の余地がある、ということ。トリックなんてもう出尽くしてて、古典作品にいつまでも勝てないのに、未だに本格やってるやつはちょっと時代遅れだよね、って風潮、ありますけれど。そうじゃない。本格ミステリィの構成要素には幾らでも輝くものがあるんです。それを作家が(たとえ本格という形じゃなくても)どう活かしていけるかということこそが、ミステリィというジャンルの今後の課題なのではないでしょうか。

――偉そうなこと言ってますが、言ってみたかっただけです……。
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しましま1号
 流石とりねこさんだね。本を読むのにそこまで考察して読んでるとは・・・。オレはいつも楽しんで終わりですが。
 見習わないと・・・。

PSmasqueradeの6を期待しております。
2006.12.20 Wed 16:01 URL [ Edit ]
しましま1号
 ごめん5だった・・・。
2006.12.20 Wed 16:02 URL [ Edit ]
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