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自作小説(短編中心)と書評(というか感想文)。 ジャンルはミステリィが主体です。
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2007.05.24 Thu
J・D・カー生誕百周年記念アンソロジィ。
八人の推理作家(一部例外含む)による、カーをテーマにした短編集。
いつもと違う作家の作品を読もうと思って、スクリーニングのつもりで。

芦辺拓「ジョン・ディクスン・カー氏、ギデオン・フェル博士に会う」
カーを主人公にしたメタ・ミステリィ。
凝りに凝った印象だけれど、現実の事件の推理はどうもアンフェア。
でも虚構の事件の解決は面白かった。作中のラジオドラマ、最終回でリスナは仰天しただろうなあ。

桜庭一樹「少年バンコラン! 夜歩く犬」
名探偵アンリ・バンコランの少年時代、という設定で書かれたジュヴナイル。
――浮いている。
マニアックな本格推理の書き手ばかりが集まったこのアンソロジィの中で、桜庭だけが浮いている……! 作品も、自作解題も、何か一人だけ初々しい!
まあ、良いんですけど……。ライト出身は肩身が狭いよね。
バンコランシリーズは未読(というか、まともに読んだのは前回のフェル博士シリーズだけ)なので、バンコランが原作に沿って書かれていたのかどうかはわかりません。でも、バンコラン始め登場人物は皆生き生きとしていて好印象。
芦辺と桜庭以外は皆カーのアンソロジィらしくハウダニット(特に密室)を中心に置きましたが、桜庭はホワイダニットで勝負。結果は、大御所たちに負けず劣らず、綺麗な謎解きだったと思います。

田中啓文「忠臣蔵の密室」
大石内蔵助ら四十七士が踏み込んだとき、吉良上野介は既に何者かに、しかも密室で殺されていた! という歴史フィクション。
正直ミステリィとしてはどうでもいいレヴェル。手垢のついたトリックばかりだったし。歴史小説としても、多分それほど完成度は高くないのではないでしょうか。
エピローグ2は吹き出しました。これが書きたかったんだね。

加賀美雅之「鉄路に消えた断頭吏」
フェル博士とバンコランの華麗なる競演、対するは三重密室。
ファン垂涎の豪華キャスト、――なんだろうなあ。バンコランを知らないから、他人事なんだけど……。
ハウダニットのお手本のような、詰めのしっかりとした解決でした。
ただし、凶器の問題はちょっと、ベタ過ぎたかと。

小林泰三「ロイス殺し」
一人の悪党を殺すまでの道程をモノローグで語り通す。
ハウダニットも勿論扱っていますが、この作品の核になっているのはじわじわと伝わってくる語り部の狂気。――うーん、ミステリィ要素捨ててホラー一本でいった方が良かったんじゃなかろうか。作者は色々、思うところがあるみたいだけれど……。
落とし方が絶妙。短編としての完成度はとても高い。

鳥飼否宇「幽霊トンネルの怪」
D三課のマーチ大佐のパロディ。――らしいが、知らん。
コメディ風のタッチですが、提示される謎は魅力的。トンネルの中、消えては現れる黒塗りのベンツ。これぞ不可能犯罪。
でも……、その謎に興奮できたのは解答編に入るまで。
いくらなんでもこの解決は酷過ぎる。もっと周りのレヴェル読んで!

柄刀一「ジョン・D・カーの最終定理」
メタかつアンチ。アプローチの仕方は芦辺に似ていると思います。
出し惜しみなく次々と繰り出される不可能犯罪。ミステリィを愛する青年たちの輝かしい世界とその破滅。読了後の後味の悪さ。
このアンソロジィの中で抜群に上手いです。柄刀一、要チェック。

二階堂黎人「亡霊館の殺人」
カーといわれてこの人が出てこないはずはありませんよね。
かのH・Mが、甥っ子の巻き込まれた密室目張り殺人に挑む。王道。
いかにも二階堂らしい作品、という印象。
あまりひねりがないトリックだったので、ほぼ完答できました。

全体を通すと、カーとか関係なくても、ハズレはあまりなく、一冊で何人もの作風を楽しめるお得なアンソロジィだったと思います。
ハウダニットに目新しい要素がなかったような気がするのは、やはりもう出尽くしたからか。
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